November 15, 2004 12:00 AM

映画館という名の至福 3

November 12よりつづく
では、そのエクスペリエンスとやらを具体的に説明してみよう。取材や打ち合わせの帰り、まだ家に帰るには早すぎるとか、夕食を外で摂っていきたいけれどもまだ時間が早いときなどに「映画でも観てっか」という気分になる。ここで、「絶対あの映画観なきゃ」とか「あの映画観るために時間作らなきゃ、予定入れなきゃ」とかなっていないのが、ポイント。あくまでも、時間が余っているから、暇つぶしに行くというのが重要。ケータイのサイトで作品と時間をチェックする。観たい作品や時間が合わなければ、サッサと諦める。映画を観るために時間を潰したり、待ったりするのは本末転倒だからだ。

作品と時間を決めたらその場所(大抵、歌舞伎町か新宿)に移動して金券ショップで前売り券を購入する。すでに公開されている作品でも、1300円で買うことができる。この手間だけで500円も得するのだ。

そこから歌舞伎町一番街を抜けて、コマ劇の映画館街に行く。劇場内のドリンクは高いから、ジュースとか飲みたかったら、外で買っていく。そういうときは何となく腹が減っている場合が多いので、時間に余裕があるときはモスバーガー、無いときはロッテリアでハンバーガーを買っていく。

そして、劇場に入る。渋谷の単館系のようにオシャレな若者の行列ができているなんてことはないし、キップもぎりも田舎から出てきたばかりみたいな感じであか抜けない。そういった場末感漂う「勝手にしやがれ」な雰囲気がいいのだ。整理券とか渡されて、細かく世話を焼かれるのはイヤなのだ。平日の昼間なので、当然ガラガラなんだけれども、全く客が居ない訳ではなくそこそこは入っているのが東京だ。昼間っから何をやっているの、という人が結構多い。こないだなんかおばさんみたいなのがケータイで話しているのが耳に入ったんだけれども「レイアウトの直しがなんたらかんたら」って話をしていた。同業者である。恐らく、納品後の気分転換にでも来ていたんだろう。そのように他の客を観察して、仕事を推測したりするのも楽しい。

席は割と前の方の真ん中か、少し左あたりを陣取る。大抵の人は後ろに座りたがるが、せっかく劇場に来ているのにスクリーンから離れて座ってどうするんだ? 視野からスクリーンがはみ出しても困るけれども、基本的には結構前目に座る。

そして、暗くなってCMとトレーラーが始まる。だいたい、20分くらいはそれが続くので、その間にハンバーガーなどのメインディッシュは片づけておく。本編が始まる頃には、コーラとポテトが少々残っている程度だ。

本編が始まってからは作品を楽しむのは当然として、客の反応も観察して楽しむ。観客が笑ったり、息を飲んだりするタイミングなんかを見て、「こういうところで反応するのか」というのをチェックする。特にコメディなんかで日本人には分かりにくいネタで自分は笑ったけれども、他の人は無反応だったとか。「オレはこのネタを理解したぜ!」とアピールするように、皆が笑ってないところで笑ってみたり。「六月の蛇」を観ているときも結構連続して爆笑していたら、前に座っている人が振り向いてきたりした。あの映画はどう考えてもギャグ映画だと思うのだが、あの前に座っていた女の人はフェミニズム映画だとでも思って観ていたんだろうな。こういうのも、劇場ならではの楽しみだ。

作品を観終わった後も楽しみは続く。出てくる観客の表情を観察するのだ。難解な作品や駄作だった場合が顕著なんだけれども、犯罪の被害者になったような顔で出てくる人や訳が分からずキョトンとした表情の人を見て、「ああ、かわいそうにコイツらには理解できなかったんだろうな」などと思いながらほくそ笑むのである。デートで来ていたのに、予想していたのと違ってて、気まずくなって会話ができなくなっているカップルなんかも面白い。こっちは、1人で来ているから、いちいち観賞後に批評家になって作品を評論する必要もない。クソから未消化のピーナッツでも拾うかのごとく、つまらない映画を無理に褒める必要もない。逆に素晴らしい作品でも周りに喧伝する必要もない。自分だけの楽しみとして、心の奥にそっとしまっておいて、必要なときにすっと引き出せばいいのだ。
(つづく)

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コメント

私も映画は好きですが、奥山さんには負けます。私が映画を最も好きだったのは、邦画が好きなせいもあってATGという会社で作った映画が見られた頃でした。ビデオが普及する前には古いフィルムが2.3本の上映で500円から600円で見られたので、何を上映しているかも調べないで体を映画館に放り込んで、ひたすら見ていました。一人で見に行くと痴漢にあうのでいつもはじっこの席をとって隣りには荷物を置いて見ていました。奥山さんの生き様って映画になるような気がする。だってこんなに共感者が多いんだもん。ラストシーンはバイクで景色のいいところを走っているところがいいな。「生きる。生きる。今を生きる。」っていうのがラストシーンのセリフで。映画のタイトルは「風を感じて」か「TEKNIX」主演はトキオの長瀬君。

Posted by: アッコ : November 16, 2004 01:03 AM

やったー、まだ続くのか!リズム感ある書き方が凄く好き。
〜を抜けたら、〜で、〜で… っていう。
楽しみにしてます。

Posted by: eng : November 16, 2004 01:13 AM

私は映画館では後方に座る派です。
結構空いててもやはり後方に座ります。
その理由は絶対に人の頭と画面が重ならないように。
最近の映画館はかなり傾斜がありますので目の前の席に人がいても視界を妨げることは無いですけどね。
以前、眼の前の席に頭にデカイリボンを付けたブスが据わった時には、毟り取ってやろうかと思いましたよ。。

Posted by: XXX : November 16, 2004 02:52 AM

上映が終わり、席をたって出るときの人の会話ってなんとなく聞いてしまう。とりあえず私は映画館を出てから喋ろうと思う。連れにいろいろ聞きたい事があっても、あとあと。だからあなた(連れ)も今ヘンな事聞かないでね的に静かに目で圧力をかける!きょとんとしたカオなんて誰にも見せない、見せるものかぁ!って感じデス。でもそういう自分たちがおかしくて伏せ目がちになってるかも知れません。自分を客観的にみることができました、今。
あと、誰か連れがいるとやっぱり作品選びや時間も勝手に決められない。気分でスムーズに観るのはやっぱり一人の時ですね。初めて一人で入った時は、集中して観るってゆーのはこういう事かと思いました。少し前、一人の時に真珠の首飾りの少女を観たんだけど、やっぱり一人で観てよかったなって思いました。誰かと共有する映画じゃなかった気がして。超話題作なんかは始めから誰かを誘って行く気になってますけど。あと映画館で思う事はエンディングロールに入ったらすぐ立つ方、仕方ないけど私、さみしい。キャシャーンのエンディングロールの時はさすがに誰も立たずに聞き入っていたので気持ちよかったです。

Posted by: 麻衣 : November 16, 2004 11:40 AM

 確かに今は 多少なりとも映画のストーリーの情報が入ってから観に行く場合が殆どかもしれない。この作品を是非観たい!って思って観に行く事が多くなった。昔は映画館で封切られるものを選別無しに見ていたからね。
 まだ、お子ちゃまなのに、「時計仕掛けのオレンジ」観ちゃって衝撃を受け、家に帰ってから母に 「どんな映画だったの?」 ときかれてしどろもどろになりながら 「ウーン、ベートーベンの第9が良く流れてる映画かな」 と答え、「そう、常に音楽の勉強ね。偉いわー」  それを聞いていた兄が 「えー。ママ。違うんだって。そんなんじゃないよ。」   
 又、その兄は「ソドムの市」なんて究極の映画を見てきちゃって気分が悪くなり、珍しく何食か抜きました。それを見て 「いいか、ゼッタイに見に行かない方が良いぞ」 という言葉をその時信じたのでした。
 最近では映画祭で「ブラウンバニー」を観て、例の終盤の どうしてそうなるかなー?の場面で斜め前で見ていた20ぐらいの女の子がショックからか気を失って ゴテン!と倒れて大騒ぎになったりと なかなか 先入観無しにふらりと見に行くのもそれなりに乙なものですよね。

Posted by: 木挽 : November 16, 2004 01:01 PM

読んだ感想「あー楽しかった。」・・サクサク読めました。前半の「あくまでも時間が余っているから、暇つぶしに行くというのが重要。」というのは憧れでも有るし、実際やった事も有るけど何か、「その余裕・時間の使い方」が「ちょっとの間のくつろぎ」になって映画を楽しめたりします。まぁ一人で「ホラー映画」は観にいけないのですが、できれば「誰も知らない」は一人でじっくり「会社の帰りにふらっと映画館に立ち寄って色々考えながら帰宅する」というのはやってみたかった・・・です。

Posted by: yoshimi : November 16, 2004 02:07 PM

>出てくる観客の表情を観察するのだ。

・・・・いけずやなぁ〜

Posted by: jugon : November 16, 2004 10:48 PM

麻衣さん、真珠の首飾りではなく、耳飾りではないでしょうか?本当に観たんですか?私が知らないだけで、真珠の首飾りの少女という映画があるのであれば、謝りますが・・・

Posted by: グレーてる : November 17, 2004 02:19 AM

何の情報も無いままいきなり観てしまった映画といえば、「シックスセンス」でした。試写会当日にチケットをもらって即会場へ。そこでわかったのが主演:ブルース・ウィリスということだけだったので、てっきり「ダイ・ハード」みたいな映画を想像して観始めたら、あらびっくり!さらにエンディングは秘密にして下さいなんてテロップが流れて2度びっくり。

普段は時間潰しに映画館に行ける生活をしていないので、観たいと思った映画、あらかじめ情報を持っている映画しか観に行けません。恐がりで泣き上戸なので、「きゃー」って叫んだりハンカチ忘れたなんてことの無いように準備は欠かせません。

私にとっての映画は「準備して映画館へ出かけて余韻にひたる」という一連のエクスぺリエンスです。ほとんどレイトショーですが、仕事から急いで帰って食事して防寒グッズを持って映画館へ走るところまでが序章で、映画本編を楽しんだ後、深夜に車の窓を全開にして連れとしゃべりながらの帰り道があって完結します。真っ暗な田舎道をちょっとぱかり飛ばしながら興奮気味に映画の話をする、お互い相手の話はほとんど聞いてないんだけど、でもそこで言いたいことを吐き出しておかないと映画の非日常からリセットできないような気がして思いっきり勝手なことをしゃべりまくって、家に着く頃にはいつもの自分に戻ってます。

Posted by: あさ : November 17, 2004 12:24 PM
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