December 07, 2004 12:00 AM

書くということと映画の関係 1

一応、文章を書いて禄を食んでいるので、映画で作家や脚本家など文章で生活している人間が出てくるとついつい観てしまう。

他の職業の人、例えば医師や教師の方なども自分と同じ職業がテレビや映画に出てくるとついつい見てしまうのではないだろうか。そして、「現実はこんなんじゃない」「リアルじゃないなあ」とか文句をつけながら。自分の場合は、文章を書くという仕事以外にも、編集者の経験もしているので、そういった職業の人が出てくるドラマなんかを観たりすることはある。

基本的にドラマや映画に出てくるそういった役の人達は現実とは往々にして違うことが多いと思うのだが、編集者のそれは遙かに現実離れしている場合が多かった。もちろん、そのドラマや映画がそういった「職業の人達の仕事ぶりをリアルに描写する」のが目的であるならともかく、物語を面白おかしく進めるための設定された場合、作り手によって都合の良いように脚色される。

ドラマに出てくる編集者で「これはリアルじゃないなあ」と思ったのは、演じている役者がきれいすぎるのである。これは顔の醜悪の問題ではなく、現場の格好をしていないというか。編集者は勤務時間が長いためにキツい格好、スーツなどを着ている場合は特別な場合を除いては少ないのだが、ドラマに出てくる編集者は大抵きれいな格好をしている。

さらには、舞台の一つとして出てくる編集部がきれいすぎる。これまで、編集者時代からライターの現在に至るまで様々な編集部にお邪魔してきたが、キレイにキッチリ整頓されている編集部は皆無だった。どこの編集部も机の上には雑誌のバックナンバーや資料が積み上がり、足元には読者からのハガキやもらい物のサンプルなどで足も入らないような状態になっている。もちろん、比較的片づいている編集部は存在したが(ファッション系は割ときれい好きかもしれ得ない)、それでもキレイというのとはちょっと違うと思う。

結局、それはどういうことかというと、編集者というお仕事はそのままでは「絵」になりにくいということなんだと思う。例えば、スーパードライのCMで編集者バージョンを考えてみるとしよう。スーパードライのCMとは各界で活躍する人達が活躍している様子を小気味よく編集したシリーズだ。活躍している様子というのは、すなわちその仕事における見せ場だ。医師だったら、難しい手術に成功したところや、診察しているシーンなどだろうか。教師なら熱い授業をしているシーンや、生徒と語らったりするところになるのだろう。でも、編集者のそういうハイライトシーンとなると思い浮かばない。仕事上の成功シーンは想像できる。編集している雑誌が売れたり、担当している作家が賞を取ったりするシーンだ。でも、日常の業務で「これが編集者の仕事だ!」っていうのがありそうでなかなか無いのである。

出版社は「電話が一台あれば始められる」仕事だといわれている。実際にはPCやファックスぐらいは必要になるだろうけれども、基本的にこの言葉は真実だ。電話で作家に原稿を依頼して、原稿をもらい、印刷屋に原稿を渡して本を作れば仕事は成立するのだ。編集者の日常の主な業務はといえば、基本は取材と打ち合わせだ。取材ほど編集者にとってエキサイティングな仕事はないと思うのだが、絵的にはただテープレコーダーを回して被取材者と喋っているだけである。また、重要な仕事である打ち合わせ。ベストセラーや雑誌の目玉企画も打ち合わせから生まれてくるのであるが、絵的には喫茶店でお茶を飲みながら喋っているか、メシでも食いながら喋っているだけである。

日常業務の中でいかにも編集者ならではのものといえば、印刷屋から上がってきた校正に赤入れをしている所ぐらいだろうか。それにしたって、相当地味な作業である。何しろ、机に向かって延々赤いボールペンで修正を入れているだけなのだから。とても、ドラマや映画のワンシーンとして成立できるとは思えない。
(つづく)

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コメント

初めて書き込みします。
今回奥山さんは「編集者」という職業が、メディアでは、「リアルじゃない」イメージで描かれているとおっしゃっていましたね。
私事で恐縮ですが、私は就職活動期を迎え漠然と編集の仕事に携わりたいと考えていました。
しかし編集の仕事を理想化していた自分の甘さを実感しています。
なるべく行動を起こし奔走していますが、情報を収集し行動を起こすことはこんなにも難しいことであると実感しています。
そんな中、奥山さんのHPは編集者生活の一端を垣間見る大切なツールです。
コラムは後編があるとのことで、また元編集者の立場のお話が伺えるのではないかと楽しみにすると同時に、同業を目指す者としてはヒントになるものを見つけたいと思っています。

それでは。

Posted by: 夏 : December 7, 2004 01:56 PM

私にとって、作家が出てくる映画のナンバーワンは
「ワンダー・ボーイズ」です。
マイケル・ダグラスってぜんぜん興味がなかったけれど、
あの映画で枯れたおっさんを演じてるのを見て好きになった。
奥山さんは原作も読んでたりしますか?

Posted by: あきちん : December 7, 2004 07:57 PM

奥山さん、こんばんは。
ドラマや映画における「編集部」の描かれかたについて
リアルじゃないという意見。
まったく同感です。編集部って雑然としてます。
仕事も作家の先生や印刷所との〆切りを巡る攻防だったり。
見た目カッコイイのは一部表面だけだと思います。
昔ゲーム業界が舞台となったドラマがありましたが
あれも見ていて歯がゆかったです(ゲーム業界にいたので)。
製作者は業界モノをやりたがりますが、どうして最低限の事を調べて作らないのでしょう。別にコテコテのリアルは求めませんが、こりゃ無いよ、あんまりダヨ!ってツッコミを入れさせるのはいい加減卒業して欲しいです。

Posted by: クミコフ : December 7, 2004 09:29 PM

編集者をセクシーに撮ろうと思えば出来ない事もなさそうだがなあ。
いい加減ビールCMみたいな画は飽きたなあ。

Posted by: はなちゃん40 : December 7, 2004 09:41 PM

ワンダーボーイスは原作も読んでますよ。確か、マイケル・シェイボンという作家で、結構読むのに苦労した記憶が。僕もマイケル・ダグラスは大好きなのですが、彼の場合、富豪役がもの凄くハマるとおもっています。>あきちんさん

Posted by: alt-editor : December 7, 2004 10:08 PM

当方は漫画家。
メディアでの漫画家の描かれ方も嘘ばかりで、一番大変な作業…ネーム(ストーリー作り)作業をしている場面はめったにないです。それこそ、ベッドでごろごろ、ゆかでごろごろ、散歩で悶々、風呂に浸かってウダウダ…なので絵にならないのは仕方無いですが…。ペンにインク付けて絵を描いてる時間なんて全体の何分の一でしかありません。

そしてドラマや映画で描かれる編集部見ていつも思う…
あんな、昼間っから編集者がほとんど机の前にいる編集部なんてありえねえ。

Posted by: へのへの : December 7, 2004 10:49 PM

その昔、編集プロダクションにいた時代
やはり本と資料に埋もれつつ仕事をしていた者です。

リアルとほど遠いと思ったのが
映画「ブリジット・ジョーンズの日記」です。
出版社勤務の男女(うちひとりは主人公)が、
仕事をほとんどせず、社内メールのやりとり(恋の駆け引き?)ばっかりしているのです。
「お前ら、仕事しろ!」と思いつつ、鑑賞しました。
彼らは、編集じゃないセクションにいたのかも
しれませんが……。

Posted by: ミイ太 : December 8, 2004 01:33 AM

絵になる職業の方が少ないですよね。
ほとんどの職業はデフォルメしないと、絵にならない。
医師だって、TVの世界とはかけはなれてます。

Posted by: hal : December 8, 2004 11:35 PM

いや、極論だが「パッと見」で華のあるなしは映像化と無縁と思う。

職業ではないけど陪審員を描いた「12人の怒れる男」があるじゃない。

Posted by: x : December 9, 2004 04:05 PM

やっぱり!
奥山さんなら、原作読んでるだろうなと思いました。
伊達に何年も奥山ファンをやってません。

マイケル・シェイボンですね。探してみます。

ちなみにいまベトナムに旅行に来ていて、
ハノイのホステルのコンピュータから書いています。
では!

Posted by: あきちん : December 11, 2004 10:59 PM
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