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「香々(しゃんしゃん)パピルス」って?
何かを嗅いで、何かを思い出す。フレグランスから、日々のそこかしこにある匂いまで、香りを言葉にする名手がつづる、人生を豊かにする香りのレッスン。
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最終回 香り業界の将来を楽しむ
香りの配信システムというニュースが行き交う今日だ。ファクシミリ登場の時も驚いたが、香りの配信もすごい。ファクシミリをはじめて見た時は、細い電話コードの中を文字が通って相手から送られてきたように錯覚したけれど、送られてくるのは信号であり文字ではないと後から知った。香り配信も、向こうの香りそのものが送られてくるのではなく、送られてくるのは指示データである。そのデータ指示によって自分のところにある香料が香る仕組みらしい。香料版、ジュークボックスを連想する。
以前、植物園でボタンを押すと穴からその花の香りが出てくるという仕組みを見て、はじめて目にする香り装置にビックリしたけれど、そういったものが今後はより複雑に種類豊富に楽しめるようになるだろう。
香り業界の将来、何が楽しみかといえば、こういったシステムが一般化されたりポータブル化されることを期待する。そういう中で、もっともっと香り遊びが広がっていってほしいし、みずからの手によっても広げたい。こういうことは単に技術のみの問題ではなくて、むしろその後の展開となる企画のほうにかかってくる部分が大きいと思う。技術だけが一人歩きしても、楽しくなければ広がらない。どれだけ楽しい企画を提案・提供できるかが勝負で、そこのところの魅力なしにはおそらく浸透しづらいと思う。
こういうシステムを思いきり楽しむためにも、香りのことを少しでも知っているほうがトクである。
近頃おたよりをいただく中で、「私も香りを勉強したいと思っています」とおっしゃる方が少なくないことに驚いている。もともと「いつか香水や香りのことを学んでみたいと思っていた」のだそうで、私と同じような希望を持つ人が複数存在することに気づいた。ともかく香料の面白さだ。アロマテラピーに次いで、これからは香りそのものを学ぼうとする人ももっと増えていくのではないだろうか。静かな「香り学習ブーム」、ぜひ到来してほしい。
町に料理教室はあっても香り教室はない。けれど香りを学ぶことは味・風味にもつながってゆくから、意外なところで役立つ。たとえば生クリームひとつにしても、昔だったらそのままの味かせいぜいイチゴ味かチョコレート味くらいしか考えなかったけれど、今はいろんな食材を使ってメロン風味とかトロピカル風味とか、花の香りのアイディアをとりいれてみたり、いろんな風味の生クリームを作ってみることができる(…生クリームを作るために香りを勉強したわけではないのに、これは嬉しい副産物だった)。あるいは逆に、風味でのアイディアを香料のほうに反映させたり、そのようにして知識をもとにアイディアをいろんなものと双方向に行き来させることができる幸福感である。
とりとめなく香りの勉強がしたくて、以来むさぼっている。私の場合、もとは香水のことが知りたいというところから始まった。なぜこのフレグランスはこういう香りがするのだろう? なぜこのフレグランスの香りにふれると不思議な気持ちになるのだろう? 手品のトリックが知りたかったのだ。
そして野菜と同じように、香水にも“旬”があると昔から思っていたし、それは個人的な感覚をこえて共有できるはずだという予感もしていた。香水なんて世間ではアクセサリー感覚で「お飾り」に見られているかもしれないけれど、旬というものを考えると、こういうものでも生命とつながっていると実感する。
やはり嗅覚だ。
子供のころ、吹いている風の香りの正体が知りたいと思った。そのころの夢が少しずつかなえられていく。時間がかかっても、知ることをあきらめなければなんとかなる。そう思える“香り”という分野に出会えたから、これからも香りの道を進んでいきたい。
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