パブリディ
日めくり犬の句猫の句
犬と猫の俳句を1日1句ずつ選んで解説。
季節の言葉(季語)とともに味わう「犬猫歳時記」


5月30日
  猫にも美形と不美人があることは、以前もこの欄で書いた。
  この句の「猫」は、「不器量」であるから、あまり美しくないのだ。
  でも、この作者はその「不器量」さが逆に気に入っているらしい。そしてその「不器量」な「猫」を「愛し」、抱いているのである。
  あたりはいよいよ梅雨がやってくる「卯の花腐し」の季節。うす暗い雲の中で、愛する「猫」といっしょに楽しく生活するのである。

5月31日
  きょうで「五月」も終わり。明日からは六月で梅雨の月に入る。
  目の前で猫が「白き尾」を立てながら遊んでいる。ご機嫌で「生き生きと」動いているのだ。「生き生き」という表現と「五月尽」の取り合わせがいい。
  五月が終わるのに、猫は人間社会とは関係なく、猫として「生き生きと」走りまわっているのである。「生き生き」ととらえた表現に、いかにも猫好きの作者であることがよく出ている。


5月30日

「青芦」は、青蘆のこと。蘆は水辺に群生するイネ科の多年草。6月頃、薄(すすき)に似た細長い葉を青々と茂らせ、高さ2、3mにもなる。
「あし」は「悪し」に通じるので、「善し」と言い換えて「葭」の名も生れた。
「青芦」の密生する中へ走ってきたのだろう。犬が舌を「花びら」のように垂らして息を弾ませている。眼前に広がる「犬の舌」を「花びらと垂れ」と表現したことで、「青芦」を吹き抜ける爽やかな風と匂い、水辺のきらきらとした光、そして影も感じる。

5月31日
  ローマ神話の女神で、結婚と女性の守護神ユーノー(ジュノー)の月とされる「六月」。この月に結婚する女性、つまり、「六月の花嫁」(ジューン・ブライド)は、幸福になるといわれている。高温多湿の梅雨にあたるため、日本のホテルや式場は比較的すいているので、希望の日どりが取りやすいという利点も。
  式を明日に控えて、あるいは、これから式を挙げようとしているのか。「六月の花嫁」に「抱きしめ」られて、犬も幸せそう。
  衾去は、女優の冨士眞奈美さんの俳号。


昨年6月より1年にわたり連載してきました「犬の句猫の句」は、
5月31日で終了致します。ご愛読有り難うございました。



プロフィール

石寒太(いし・かんた)
1943年静岡県生まれ。本名、石倉昌治。月刊俳句雑誌「炎環」主宰。雑誌「俳句αあるふぁ」編集長。70年「寒雷」に入会、加藤楸邨に師事。句作は有季定型であるが、種田山頭火、尾崎放哉など自由律俳人への造詣も深く著書も多い。日本文藝家協会、近世文学界、俳文学会、現代俳句協会会員。毎日文化センター、NHK俳句教室、朝日カルチャー講師、静岡新聞俳壇選者を努める。句集『あるき神』『炎環』(以上、花神社)『翔』(ふらんす堂)『夢の浮橋』(光書房)のほか、評論、随筆に『心に遺したい季節の言葉』(KKベストセラーズ)『おくのほそ道謎解きの旅』『俳句はじめの一歩』(以上、リヨン社)『初めての俳句の作り方』(成美堂出版)など、著書多数。
主な主宰サイト
「炎環」ホームページ
http://www5c.biglobe.ne.jp/~enkan/
寒太のしりとり俳句塾
http://www.maki-taro.net/haiku/


吉田悦花(よしだ・えつか)
千葉県生まれ。「吉田悦花のわん句」主宰。月刊俳句雑誌「炎環」編集長。現代俳句協会会員。愛犬は18歳のジョニー。ノンフィクション作家・吉田悦子として、『日本犬 血統を守るたたかい』(小学館文庫)『老犬との幸せなつきあい方』(新星出版社)『備えあれば…の老犬生活』(ネコ・パブリッシング)『犬ときらめく女たち』(新人物往来社)『江戸ソバリエ』(マキノ出版・編)などの著書がある。現在、「Shi-Ba」誌に「吉田悦子のニッポンの犬探訪記」「真・ハチ公物語」などを連載中。日本ジャーナリスト会議・平和に生きる権利の確立をめざす懇談会、各運営委員。NPO神田雑学大学・江戸ソバリエ霞の会・風の学校・NGO緑のサヘル、各会員。日本ペットエキスパートアカデミー講師。大学・公開講座・セミナーなどでの講義、シンポジウムのコーディネーターなど、多方面で意欲的に活動。
主な主宰サイト
吉田悦花のhaikuファクトリー
http://touki.cocolog-nifty.com/
吉田悦子アーカイブス「吉田悦花のわん句」大募集
http://homepage3.nifty.com/e-factory/


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